第2部の最後は、5つ目の基本ゲーム。
情報の非対称性と、シグナリングです。
ここまでのゲームは、お互いの選択肢が見えている前提でした。
現実はもっと意地悪です。
相手の「中身」が見えない。
売り手は商品の本当の品質を知っているが、買い手は知らない。
求職者は自分の実力を知っているが、採用側は知らない。
この情報の片寄りが、市場を壊すことがあります。
経済学者のジョージ・アカロフが1970年の論文で示した、有名な思考実験があります。
舞台は中古車市場。
アメリカのスラングで、外見はきれいでも中身がポンコツの車を「レモン」と呼びます。
買い手は、目の前の中古車が当たりかレモンか、見分けられません。
だから「ハズレの可能性込み」の慎重な値段しか払わなくなる。
すると何が起きるか。
その値段では、当たりの車の持ち主が売りに出さなくなるんです。
良い車が市場から消え、市場に残るのはレモンばかりになる。
買い手はさらに疑い深くなり、値はさらに下がり、良い車はさらに出てこない。
悪循環の果てに、市場そのものが立ち行かなくなる。