最終第5部は「学問のその後」です。
ここまでゲーム理論の便利さを散々語ってきたので、まず、この理論への批判を正面からやります。
良い道具ほど、効かない場面を知って使うべきだからです。
ゲーム理論への最も鋭い批判は、理屈ではなく実験から来ました。
「最後通牒ゲーム」という実験があります。
2人組の一方に、たとえば1,000円を渡し、相手との分け方を提案させる。
提案は1回きり。
受け手が承諾すれば提案どおりに分配、拒否すれば2人とも1円ももらえない。
理論の予測はこうです。
受け手にとって、100円でも0円よりは得。
だからどんな低額提案でも受けるはず。
それを見越して、提案者はぎりぎり少額を提示するはず。
実験結果は、まるで違いました。
世界中で追試されていますが、あまりに不公平な提案——たとえば2割以下——は、受け手が自分の取り分を捨ててでも拒否することが繰り返し観察されています。
人は、たかだか数百円のために「合理的」には動かない。
不公平への怒りに、お金を払うんです。