前回、「人間はそこまで合理的ではない」という批判をやりました。
今回は、その批判への、理論側からの意外な回答です。
プレイヤーが何も考えていなくても、ゲーム理論は成立する。
進化ゲームの話です。
1970年代、生物学者のジョン・メイナード=スミスが、ゲーム理論を生物の世界に持ち込みました。
動物は利得表を読みません。
計算も推論もしない。
それでも、動物の行動パターン——縄張り争いで引くか押すか、協力するか裏切るか——には、きれいな規則性があります。
なぜか。
メイナード=スミスの答えはこうです。
戦略は、頭で選ばれるのではなく、生存で選別される。
うまくいく行動パターンを持つ個体は子孫を残し、そのパターンが集団に広がる。
うまくいかないパターンは、持ち主ごと消えていく。
合理的な選択の代わりに、淘汰が「計算」を代行するんです。
こうして生き残り、侵入者に崩されなくなった戦略を「進化的に安定な戦略(ESS)」と呼びます。
ナッシュ均衡の親戚ですが、誰も考えていないのに到達する、という点が新しい。