1986年、任天堂は立て続けに2本の実験作を出します。
2月に『ゼルダの伝説』、8月に『メトロイド』。
どちらも当時としては異様なゲームでした。
マリオのような「右に進めばゴール」という明快さがない。
広い世界に放り出され、どこへ行くべきかも教えられない。
しかしこの不親切こそが発明でした。
『ゼルダの伝説』の原点として、宮本茂がよく語るのが子ども時代の原体験です。
京都の田舎で野山を歩き回り、あるとき地図にない洞窟を見つけて、ランプを持って入っていった。
あの心細さと高揚感をゲームにしたかった、と。
だから『ゼルダ』は、道順を教えません。
フィールドは最初からほぼ全方向に開かれていて、どの順で攻略するかはプレイヤー次第。
岩を押せば階段が現れ、怪しい壁は爆弾で壊れる。
世界そのものが「調べれば応えてくれる」ように作られている。
攻略の自由と発見の快楽。
のちのオープンワールドと呼ばれるジャンルの種は、この時点でほぼ蒔かれています。
実際、30年後に『ブレス オブ ザ ワイルド』がやったことは、この初代の精神への回帰でした。
この話は第5部でもう一度します。