1985年、一人の若い研究者が『ネイチャー』に論文を発表しました。
内容は衝撃的でした。
エジプトのミイラから、DNAを取り出すことに成功した、というのです。
書いたのはスヴァンテ・ペーボ。
当時はスウェーデンの大学院生で、指導教官には内緒でこの研究をやっていました。
昼はまじめにウイルスの研究をして、夜になるとミイラの肉片を煮ていたそうです。
論文は世界中で大きく報じられました。
古代人の遺伝子が読める時代が来た、と。
ただ、この論文で読まれたDNAは、ほぼ間違いなくペーボ自身のものでした。
古代DNA研究の歴史は、そのまま「汚染との戦いの歴史」です。